童話曇灯-fairytale detective-
「じゃあ、次回はマフィンづくりで決まりね!」
姫羅が水泳部に参加している頃、家庭科室にはそんな声が響いていた。
乙戯学園の家庭科室は、何ともメルヘンチックに仕上がっている。
床と壁は薄いピンク。
調理台は全部で6つ。
全てのカウンターは、白で統一されている。
カウンターの下は2色にわかれており、2つずつ名前まで付けられている。
ピンクと赤の、イチゴムース。
グリーンのパステルカラーと薄い水色の、クリームソーダ。
茶色と黄色で彩られた、チョコバナナ。
「吐き気がする……」
「宝子くん、どうかした?」
「い、いえ……。何でもない、です」
にっこりと微笑む宇率を見て、王輝が苦笑いを返した。
授業で家庭科室を利用する際でも、この部屋を見て眉をしかめる男子生徒は多い。
王輝の性格なら、なおさらだろう。