童話曇灯-fairytale detective-
「これが、安出泉のロッカーに入っていたんですの」
姫羅は、真っ赤なソファーに座る王輝に携帯電話を差し出した。
おとなしくプリンを食べていた王輝が、スプーンを口に銜えたまま姫羅を見上げる。
空いていた手で真っ白な携帯電話を受け取ると、王輝は目に力を寄せた。
画面いっぱいに映し出されたのは、安出にあてられた手紙である。
手紙は3通。
シンプルな白い紙に、びっしりと文字が書いてある。
「気持ちが悪いな、これ」
「えぇ。このように面倒なことを、よくやるつもりになったものです」
「最強に時間の無駄だな」
「書いた方の手は無事なのでしょうか?」
「どうでもいいさ、そんなこと。腱鞘炎になってたとしても自業自得だ。
ただ、こうやってご丁寧に直筆で書いてくれたことが救いだな。相手が馬鹿で良かったよ」
艶やかなピンク色が、スプーンと共に王輝の元へ運ばれていく。
プリンには似つかわしくない発言ですわね……――――