童話曇灯-fairytale detective-
◇姫達の日常
「あ、あ亜須賀さんっ! 放課後に……あの、話が……」
「わかりましたわ。部屋へ行けば良いのでしょう?」
「はいっ! ありがとうございます!」
安出泉と宇率来女を会わせた翌日の昼休み。
姫羅に話しかけた王姫は、深々と頭を下げてから自分の席に戻った。
「ねぇ、なーんで宝子が姫羅に話し掛けてるわけ? しかも、放課後に部屋って……」
不思議そうに姫羅と王輝を交互に眺めながら、鈴が言った。
「あー……成績上位者に乙戯花氏から話があるらしいんですの。部屋というのも、乙戯花氏のお部屋のことですわ」
適当にそうごまかした姫羅に、「そう」とさらっと答えた鈴は、そのまま何事もなかったかのように話題を変えた。
そんな鈴の様子に、姫羅はほっとした表情を浮かべる。
「もう少々、発言に注意しなければいけませんわね……」
もうすぐ夏がやってくることを知らせるかのような厚い雲は、青い空に堂々と羽を広げている。
姫羅は、蒸し暑さを感じさせる空気が徐々に辺りに満ちてきたことを、しみじみと感じていた。