童話曇灯-fairytale detective-
焼き上がったそれらは、初めて作ったとは思いがたいほど綺麗だった。
ゆっくりと口を開いて、マフィンを運ぶ。
「美味しい……」
王輝らしく、甘さは控えめ。
だが、それが姫羅にもちょうど良い。
しっとりと、且つ、ふんわりとした食感がとても魅力的だった。
「そりゃどーも」
冷静に返した王輝の頬に、ふんわりとした笑顔が浮かぶ。
「……ですが、何故このようなことを?」
「たまたまだ。
これでも、料理部に仮入部してたからな。見よう見まねで、こいつだけは作れるようになった。……いつも作ってもらってる礼だ」
「あ、ありがとうございます……」
最後の言葉だけ、少しボリュームを下げて言った王輝に、姫羅はさらっとお礼を言った。
「今日は、部活に顔出さなくていいのかよ?
昨日も行ってないんだろーが。仮入部の最終日は、明日だったはずじゃねーか?」
コーヒーカップを持ちながら、視線だけ動かして王輝が言った。