ラブスペル
この店に着いてすぐ、ハルから『今何処?』とメールが来ていた。

『前の編集部でも良く行ったお店で2次会中です』とは返したのだけれど、それから音沙汰がない。

ヘソを曲げてしまったのか。


「はい、はい。仕事の話しは編集会議でー。あんまり熱く語ると、並木さんがひくよー。
並木さんも、何か他のにします?それ、あまり進んでないみたいですよ」

向い合って座る私に微笑む、緒方と同期の雪ちゃん。

その気遣いが萌えるのよね、とオヤジ臭い思考を巡らせつつ、体にこれ以上アルコールを入れるべきか迷う。

結局、誘惑に負けてソルティドッグを注文した。

「緒方さんの初デートって、何処に行ったんですか?」

新人の花梨(かりん)ちゃんが、可愛らしい声で興味深げに話しを戻すと、緒方は目をしばたたかせた。

「えーっと、何処かの公園?」

女3人は、プチ自慢した割に覚えてないの?というように、顔を見合わせる。

「そりゃあ、テーマパークとかミュージアムとか色々ありますけどね、そんなのは何処でも良いんですよ。それよりも、初めてのデートで好きな子と手を繋ぐ初々しさ。並木さんも分るでしょ?」

そんな酔っぱらいの主張に、成程と頷いているのは、私以外の女子2人。

……そんな相手、小中学生の頃は疎か高校生になってもいなかったんですけど。

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