ラブスペル
身長と比例して大きく育った私のこの手、学生時代に汗を流したバスケットボールでは役に立ったが、女性の手としてはイケてないと思っていた。

爪を綺麗にしたら少しは変わるのかと、大学時代にはバイトしたお金で、お洒落なネイルサロンに行ってみたこともあった。

でも、素敵に見える予定だった指先が、白雪姫に出て来る魔女の毒々しいそれにしか見えなかった時、私は悟った。

らしくないことは辞めよう。

でも、自分の手を嫌いにならないように似合うものを考えよう。

それ以来、私の指は薄付きのネイルしか付けていない。

私は自分のパールの指先をボンヤリ見ながら、過去に耽っていた。


「並木さんの手って指が長いですよね。いつも、可愛い色だなって思っていたんです」

……思っているより、私もアルコールが回っているのかな。

緒方の言葉がぼわ~んと耳に入って来た。

私が自分の手から緒方へと視線を移すと、彼はニコッと笑って私の爪を指差す。

「えっ、やだ、可愛くないわよ。私の手って大きいから、あんまり濃い色を付けると怖い手になるの」

突然の褒め言葉に照れながら、ほら大きいでしょ?と、手を広げて緒方の目の前に晒す。が、次の瞬間、私の目が点になる。

「そうですか?あ、ホントだ。でも幅が無いかな」

緒方は何を思ったのか、私の手に自分の手を重ねて大きさを比べ始めた。


最近の子って、手なんて触るのは全然平気なの?


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