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ズキズキ痛む胸にずっと気付かないフリしてたかった。
奥の席にいるあたしなのに、入り口からの声が聞こえてくる。
あたしが聞き耳立ててるから余計聞こえるのか。
「明日から一週間会えないんだもん。来ちゃった」
大きな瞳でソウタを見上げて、寂しそうな表情のその子。何があってもこんな可愛い子に勝てるわけがない。
「ここら辺危ねぇのに来んなよ、つーか来る前に連絡くらいしろよ。ビビったんだけど」
「へへ、ごめんごめん」
肩に手を添えるソウタの大きな手。
ダメだ、見たくない。そこから目を逸らして必死に圭人君と恵に話し掛ける。
鋭い恵は勘付いたんだろうな。あたしの気持ち。