河の流れは絶えず~せせらぎ編~
「知らなかったのか?」
ひどく訝しげに聞いてくる。
たしかに、彼女と接する機会なんていくらでもあったはずだし、噂で彼女のことをいくらでも聞いたっておかしくなかったんだけど、なぜか俺には無縁だった。
くわえて、奴の警戒網は半端なかったから、彼女と奴の妹が俺の中で一致しなかった。
「ああ、最近知ったんだ。おまえの家に行っても、彼女に会ったことは一度もなかったから。」
そう言うと、奴は手を離してしばらく呆然としていた。
やがて、ゆっくりと言葉を掛け始めた。
「、、、、、なんで、今まで黙っていたんだ。」
「おまえが夏葉ちゃんをどれだけ大切にしているか、よくわかっていたから、言えなかったんだ。」
「何だよ!それじゃ、おまえ、俺の気持ちが邪魔みたいなかんじじゃねぇか。」
と、素っ頓狂な声をあげて呆れ返った。
呆れた者を見るみたいな目が俺を射る。
「そうじゃない、お互いの気持ちが固まるまで、言えずにいたんだ。夏葉ちゃんを大切にしているおまえには後ろめたいことがないように、したかった。」
「、、、、、、。」
「夏葉ちゃんにだって、肩身の狭い思いをさせたくなかった。」
はぁっ、と一息ついてまた続ける。