恋人遊戯
ようやく緩んだ腕からすり抜けて、私は先輩から離れて逃げたした。
そこからどこかへ、逃げる場所がある訳じゃないけど…そうだ…図書室に行こう…。
…さっきまで先輩たちがいた所であんな話を聞いた場所だけど…。
先輩に追いつかれないように、走って校舎に戻って図書館を目指す私は、曲がり角で誰かとぶつかってしまった。
「…きゃぁ!?」
「…っぅ…」
「ぁ…ご、ごめんな…さ……」
ぶつかってしまった人物を見て私は、体を凍り付かせてしまった。
「あ、歩望(あゆむ)…兄さん…」
「……里莉…」
目の前にいるのは私の…兄・歩望、兄さんだった。
「ど、どうして…ここに…?」
「…帰るぞ」
「え…?」
眉を潜めて、私を睨み付けたまま歩望兄さんは客用の玄関へと歩いて行った。
な、何? 何かあったの?
訳が分からないままだけど、兄さんが帰ると言われたら私はそれに従うだけしかなかった。