恋人遊戯
周りから色目きだったものに近い声をあちこちで聞きながら私は靴を履き替えた。
兄、と言っても母親は違う…つまり異母兄弟。
長男で今では一家の大黒柱でもある兄さんは、昔から私を嫌っていた。
弟の香輝も母親が違うけれども、婚姻関係のあった兄さんの母親と香輝の母親。
私は…、ただの愛人の間に出来た子供。
雲泥の差が、ある。
父親にも構ってもらった記憶がない。
ただ、疎ましそうな顔で私を見ていただけ。
「何してる。早く乗れ」
冷たい兄さんの声に導かれるように…まるで人形のように、車に乗り込んだ。
兄さん専用の運転手は、静かに車を動かしだして、家に向かっている。
…私は決して踏み入れる事の出来ない家へと…。
「髪を、切ったんだな」
「…………はぃ…」