恋人遊戯
車の中はとても静かだ。
静かすぎて不気味…。
怖い。
私は、兄さんといる空間が怖い…。
「……代わりは、ないのか?」
「…………ない、です…」
息苦しい。
ふと、車の外に視線を逸らして外を眺めた…。
そこには…。
「……先輩……」
「…どうした?」
「! …何でもない、です」
窓から視線を外して、歩望兄さんの方を振り返った。
ジッとこちらを見る先輩の顔が頭から離れられない。
睨み付けるような、悲しそうな…違うそんな事有りえない…そうよ、獲物が逃げて行くのが悔しいんでしょ…。
あんな、キス…怖かった。
まるで…獣のようで…。
私は、どこへ行っても誰かにも疎まれて、もて遊ばれるだけだもの。
嫌だ…こんな気持ち…気付かなければよかったのに…。
こんな気持ち…疎ましいだけだもの。