恋人遊戯
着替えが終わった私は、もう一度先輩の顔を見つめて、部屋を出て行く。
穏やかな顔で眠る先輩に、心の中でサヨナラを告げて…。
サヨナラ…先輩…。
音を立てずに部屋から出た私は、ホッとして振り返った瞬間、驚きのあまり悲鳴を上げそうになった。
「……ハニーちゃん! ちょっと、いらっしゃいな!」
小さな声で、私の事を『ハニーちゃん』って手招きしながら…ドアの隙間から樋高…礼子さんが私を呼んでいた。
…もう、家から出ようとしたんだけどな…。
そう、思いながら呼ばれた方へと歩いて行く。
「きゃぁ~!! 遠目から見てた時から可愛いって思ってたけど…あの子もなかなかの娘を連れてきたわね~」
顎を掴んで上を向かされたかと思うとジックリと、私の顔を観察しながら感想を喋り出していた。
人気女優のあなたが美人ですぅ~。
そう言いたいけど、何だか雰囲気的に言えないよ。
「お名前は?」
「あ…、櫻井里莉、です」