恋人遊戯



「あの子の事、聞いたでしょ。私が、一時的な感情に流されて、あの子を身篭もった時ね。私、現実を思い知らされたの…。あの時、子役のイメージが取れなくてね。自暴自棄になってたのよ。でも、この子は産みたいッ!! って思ったの」





そう言って、目の前で笑う姿は大女優の樋高礼子ではなく、樋高礼司の母親の顔をしていた。



「幸せにしてやりたいって思ってるけど、実際に幸せになるのは礼司であって。
それを判断するのも礼司。そう思わない? あ、もちろん、それには相手の子も幸せにならなきゃならないけど」







…母親って、こんなに強いモノなのかしら?



初めて、母親を目の当たりにしてしまったせいで、私は戸惑って入れてくれた紅茶を見つめるだけだった。






「………私、先輩を幸せにする事が出来ません。私と一緒にいたら辛い思いをしちゃう」






ボロボロと零れ落ちる涙をぬぐう事をしないまま、私は先輩に話した事を話し出した。…先輩に話してないお見合いの事も話して…。




「せ、せんぱぃ…にぃ、話さな、いで…んん…下さ、いぃ…」





泣きすぎて、詰まりながら話す言葉はかなり聞き取りにくいかと思うのに、礼子さんは気にする事もなく、私を抱き寄せて慰めてくれた。



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