恋人遊戯



…兄さんは再び仕事を再開して、私を見なかったけど泣いているのは分かっているはずだ。




なぜ、泣いているかを問われれば、何て答えたらいいんだろう。







先輩の事はもちろん。過去の事、これからの事。何もかもが寂しくて、怖くて、不安が体を渦巻く。





泣きながら一つを食べ終えた私を見た兄さんが、一度溜め息をついてソファに座り直してこちらを見た。





「そろそろ時間だ。行くぞ」





「………は、い」






咥えていた残り僅かなタバコを思いっ切り吸い込んで、灰皿に揉み消した。



私は、兄さんに従えば幸せになるんだ…きっと…。












玄関先に辿り着けば、これまた白いサンダルが置かれていた。



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