恋人遊戯
「8才とは言え、何も知らない事は酷だから、病気の事は元より、アメリカでの手術の肯定も話した。全て話して、自分で考えて香輝が出した答えに俺はとやかく言うつもりはない。あいつは、俺の跡を継いでもらう人間だ」
「……香輝が、跡継ぎ? に、兄さん、そんな事親戚の人達が許さないのに…」
兄さんの言った言葉が信じられなくて、私はただただ唖然としてしまった。
「結婚はしない。したがって、俺の跡を継ぐのは香輝だ。…ついたぞ。里莉、降りろ」
いつの間にか、ホテルについていたらしく、兄さんは私にそう言い残して、さっさと一人で出て行ってしまった。
それをボゥ…としてしまった私はすぐに、我に返って兄さんの後を追いかけた。
「に、兄さんは、どうして結婚しないんですか?」
…けど、兄さんは私の問い掛けに答えないまま、前に歩いて行くだけ。私の事を無視したように…私の存在を打ち消すように。
自分は結婚しない兄さんと、私に結婚を勧める兄さん。
どこか矛盾する気がするのは何でだろう。
…やっぱり、兄弟の中で一番劣っている私を疎ましいって思ってるのよね。