恋人遊戯



ホテル内の喫茶店にたどり着いた私は、息を呑んだ。




私は逃げられない、人生を恨む事はしない。生かしてもらえただけでも、御の字だもの。




泣き言なんて言えない。恩返しをしないと…。






兄さんの動かしやすいコマのように…意見なんて言わない。それに従うだけ。



「ささささ、櫻井様!?」



フロントの男性が、顔面蒼白で兄さんを見つけるなり慌てる。



どうしたのかしら?



「どうしたんだ」

「すでにお客様がいらしているんですが…」

「……どう言う事だ?」




眉を潜めて、スタッフを睨み付ける。




あぁ…、スタッフさんがさっきよりも顔を青くしてオロオロしている。



けど、兄さんとスタッフの会話から考えると、新堂先生は私たちの後にここに来ると言う設定になっているみたい…。だけど、どうも今この喫茶店には先生ではなく、違う誰か…。








……………誰?



< 172 / 283 >

この作品をシェア

pagetop