恋人遊戯



それでも私はお構いなしに病院の外に飛び出した。



雨が降りそうな空模様でも、今の私には気にしない。




裸足だろうが何だろうが…。






**********






どこをどう歩いたのか分からない。



気付けば昔、お母さんと一緒に暮らしたアパート跡に辿り着いた。


何もなくなった所は、何もなくて土が均されている状態で、駐車場とも言えない。





お母さんが自殺した後、ほとんど誰もいなかったアパートはすぐに取り壊されたと聞いても、一度もここには来た事がない。





来てしまえば、昔の私に戻ってしまう。





それが呪いのように私は来れなかった。来たら何かが終わってしまう…そんな恐怖があった。





全身、ずぶ濡れの私はユックリと空き地溶かしたアパートに足を踏み入れた。



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