恋人遊戯
普通でさえ、他人の子を引き取るなんて事ありえないのに…。
「俺も良く分からない。ただ、他人は他人でも…赤の他人じゃない」
「……? どう言う事?」
「里莉の父親が誰だか知っているのが、櫻井家元・当主らしい」
太一君が言った言葉が、私の頭の中で反芻して響き渡る。
お父さんが、私の本当のお父さんを知ってたの?
「……どうして、私を自分の娘だって偽ったの?」
「それは、誰もお前を育てたがらなかったと言うのが第一にあった」
太一君の言葉に納得出来る。
普通の健康な子供であれば、育てようって思うかもしれないけど、私は戸籍がない上に読み書きが出来なかった。
そんな子供を誰が、面倒見たがるんだろうか…。
「親戚達も世間体が悪かったしな…。伯母さん…家出人だったんだよ。随分、長い間、行方をくらましてたみたいで…」
「え!? 何それ! 初めて聞いたよ!?」
お母さんの話は、あまり聞いた事がない。
死んだ時が、30歳前だった…その事しか聞いた事がなかった。