恋人遊戯



「うん…。あの時の俺、かなりヒドかった」




私の手を繋いでない手で、頭にかきむしった。


反省してるのかな? うん、そうに決まってる。




「あの時、何にも出来ない自分が悔しくって…親だって選べれない苦しさが、耐えられなかった。けど、里莉が『親が子供を選べないように、子供も親を選べない』って言ってただろ? それが、けっこー堪えた」





最後、語尾が震えていたように聞こえた。…泣いているの?





私は、小走りになって先輩の前に周って、顔を覗き込む。


目を赤くした先輩と目があうと、少し恥ずかしそうに笑った。





「…見んなよ。ハズい…」




目を逸らそうとした先輩の頬に繋いでない手で、触れる。





少し冷たい頬に触れた瞬間、先輩の目から涙が一筋だけ零れ落ちた。




その姿が堪らなく、愛しい…と思った。



< 192 / 283 >

この作品をシェア

pagetop