恋人遊戯



「見送りに行くのか?」

「…そのつもりです」



だって、一時退院ではあるけど、大はしゃぎする香輝の姿を見たら、見送って上げなきゃって思うもん。



病院ばっかりで、学校だけじゃなくて家に帰る事すら、ままならなかったから、私も凄く嬉しい反面、何もなくなってしまった寂しさがある。




兄さんからはバイトに行かなくていいって言われてしまい、…こう言うのを手持ちぶさたって言うのかな? 今まで張り詰めていたモノから開放されて、これから自分がどうしたいのか分からない。




「俺も見送りに行っていいかな?」


「…はい…」

「…………キス、していい?」



はぃ? 先輩の言ってる意味が分からなくて、顔を上げたと同時に、本当にキスをされてしまった。


「せ…先輩ッ!!」


「…怒った?」




お、怒ったって言うか…驚いたと言うか…。



先輩は、いつも私を驚かせるから、それにただただ驚くだけ。




捨てられた子犬って訳じゃなくて、怒られてションボリとする大型犬みたい…。



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