恋人遊戯
「素直すぎる里莉が、めちゃくちゃ可愛い」
笑いながら私を抱き締めて、少し力を込めるのが分かる。
「……俺、里莉に会うまで…、お前に会わせる顔がないぐらいヒドい生活してた…。女関係だけじゃなくて、タバコも酒も…クスリも手を出しかけた…」
初めて知った、先輩のもう一つの過去。ここまでツラい過去があったなんて…。
「……はい…。でも、先輩はそれを全て止めたんですよね…。それって、スゴい事だと思います」
「ありがとう。でもさ、里莉がバイトしてる姿を見て思い知らされたね。自分がスゴいガキだって気付いて、少しでも里莉に釣り合うような男にならなきゃって…そればっか考えてた」
そうなんだ。エラい。
自分の過ちを認めて、それを直そうとする事は、エラいと思う。
「…その一歩に、里莉と一緒に暮らす事に許可をくれたお前の兄貴を見送らなきゃ…って思ったんだ」
「……はい。一緒に行きましょう…」
…私は、抱き締めてくれた先輩のシャツを掴み、笑いかけた。
先輩は、少し照れているのか…頬を赤くして私に、はにかんで笑ってくれた。