恋人遊戯
私の前から立ち去った、あの先生では考えられない、表情は何? 先輩と似たあの表情。愛しそうに私を見下ろしてた…。
分からない…。
分からないよ…。
こんな事ありえない。
いつの間にかボロボロと涙が零れ落ちた。
何に対して泣いてるんだろう…。
不意打ちとは言え、好きな先輩を裏切ってしまった行為への涙なのか、先生の気持ちを知った事への涙なのか…私には分からない…。
「…うっ、く……ふぇ…」
「……何泣いてるんだ?」
「…に、兄さん!!」
早く泣きやもうとすればするほど、涙が込み上げて来て何度も零れる滴を拭っていた私の背後に立つ兄さんを振り返った。
「……新堂か……」
溜め息を吐きながら、新堂先生が去っていた方を見ていた。
…兄さんは、何が起きたのか検討がついていたみたい…。
眉を潜めて、私を見下ろした。