恋人遊戯



黒くて重量感のあるコートに、その下には暗いグレーのスーツを着て、去年のクリスマスにプレゼントしたバーバリーのマフラーを身に着けている。




…そして、その手には……細雪が降る寒い日なのに、そこだけがパァッと明るく春になってる…赤やピンク…色とりどりのチューリップの花束を抱えていた。




「…………先輩……」


「…卒業おめでとう!」



…どうして…? どうして、ここにいるの? 仕事は?




聞きたい事はイッパイあったはずなのに…言いたい事はイッパイあったはずなのに…。




…先輩の笑顔を見ただけで、何も言えなくなって涙が込み上げて来る。



「…おいおい……。何で泣くのかな~…」





「………だ、だってぇ~…、せ、先輩が、…来る、なんて…おも、っても…みなかったから…ぁ…」




ボロボロと零れる涙が押さえられず、私はただ泣くだけ。



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