恋人遊戯



先輩を見つめていたら、私の方をバッと振り向いた。


「美味いな。里莉の母ちゃん、料理上手いんだな!!」





「…私には、母親はいませんけど…」



料理を今まで、褒められた事がなかった私には先輩の言葉は嬉しいと思った瞬間、一気に地獄に突き落とされたように思えた。



「…へ? マジで?」


…私、いつもと同じように無表情? 他人に表情を見られる事なんてイヤなのに…。

先輩の前だと、調子が狂う…。



一気にイヤな思い出が頭の中を駆け巡る。



「……悪い…。じゃ、これ作ったの里莉?」

「昨日の残り物ですけど」


…ふ~ん…。って、人事のように…イヤ、実際に他人だけどね…呟いた先輩はいつの間にか空になったお弁当を見下ろしていた。


「…先輩…? 全部食べちゃったんですか?」



「ん。食べちゃった」



し、信じらんない…。人のお弁当を取り上げた上に、全部食べるなんて…。



って言うか、食べるの早い…。



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