恋人遊戯
気持ちだけが前に出てしまい、走る自分の足が物凄くとろく思えてしまう。
「香輝!! 香輝!!」
病室の前には顔なじみの看護師さんがいた。
私と、目が合った瞬間、顔色が変えて駆け寄って来た。その瞬間、何かあったんじゃないかって不安になって…看護師さんの口が開くのがもどかしい気分になりながらも待つ。
「香輝君…意識がなくて…。今、新堂先生が見てくださってます」
新堂…この名前に聞き覚えがあったけど、今はそんな悠長にしてる暇はない。
目の前の看護師を押し退けて、中へ入る。
ピッ…ピッ…ピッ…。
香輝の命の音が、室内に一番響く。
新堂先生以外の医者や看護師も香輝を取り囲んで、血圧や注射…鼻から入れられている管が…細い体に痛々しくなるぐらい取り囲まれていた。