恋人遊戯



気持ちだけが前に出てしまい、走る自分の足が物凄くとろく思えてしまう。



「香輝!! 香輝!!」




病室の前には顔なじみの看護師さんがいた。


私と、目が合った瞬間、顔色が変えて駆け寄って来た。その瞬間、何かあったんじゃないかって不安になって…看護師さんの口が開くのがもどかしい気分になりながらも待つ。




「香輝君…意識がなくて…。今、新堂先生が見てくださってます」





新堂…この名前に聞き覚えがあったけど、今はそんな悠長にしてる暇はない。



目の前の看護師を押し退けて、中へ入る。






ピッ…ピッ…ピッ…。







香輝の命の音が、室内に一番響く。



新堂先生以外の医者や看護師も香輝を取り囲んで、血圧や注射…鼻から入れられている管が…細い体に痛々しくなるぐらい取り囲まれていた。



< 85 / 283 >

この作品をシェア

pagetop