この手は、わたしだけの特権【短】
「ちょっ…」
「優梨子の髪って、いつもキレイだよなぁ。毎日、手入れしてんのか?」

優梨子は、無言で頷いた。

昔、凌太に「優梨子はこの髪型が似合うな」と言われてから、もう何年も同じ髪型なのだ。

「へぇ~。って、お前シャンプー変えたか?」
「えっ」

それは、つい先日のこと。

「ねぇ、優梨子。好きな人いるの?」
「えっ…。なに、急に!!」
「あっ、顔赤い!いるのねぇ!もう、お姉ちゃんに紹介しなさいよぉ!」

3つ離れた姉、優紀子(ユキコ)に絡まれた。

「やだっ。絶対、話さない!」
「んもう。冷たい子ね。ま、いいわ。これ、あんたにあげる」

そう言って渡されたものは、シャンプーの試供品だった。

「なにこれ」
「ふふん。聞いて驚きなさい?これね、オトコが落ちるシャンプーらしいのよ」
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