この手は、わたしだけの特権【短】
「わたしに彼氏が出来ないから、お姉ちゃんがくれたの」
「へぇ…。で?それ使って、俺を落とそうって?」
「ち、違うし?こ、これから会うんだもん。その人と…」

あー、ダメだ。

落としたい人は、目の前にいるのに…。

優梨子は自分のウソに、後悔し始めていた。

「…行かせねぇ」
「え?」

優梨子の目を見つめる真剣な眼差しの、凌太。

小さな声だったが確かに、「行かせない」と言った。

「わりィ、聞こえなかったか?行かせねぇ、つったんだよ」

グイッと近付いてきた、凌太の顔。

「き、聞こえたよっ…」

鼻と鼻が、くっ付きそうなくらい目の前に凌太の整った顔があり、優梨子は目を逸らしてしまった。
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