風花
「…わかったよ」
癪だった。彼女の思うがままになってしまうことが。だから抵抗とばかりに無愛想を装い、仕方がない、という事を強調するように、ゆっくりと右手を彼女の前に出す。
「うん。よろしく」
即座に握られる手。彼女はそれすらもお見通しかの如く、先程と同じ種類の笑顔を浮かべていて…
そのことが癪だった。けど、何故か彼女の手を振りほどく事が出来なくて…
結局俺は、せめてもの抵抗として、彼女の手を握り返す事もせず、ただされるがまま冷めた視線を送っていた。
それに気が付かない筈もないのに、彼女は楽しそうな笑顔を浮かべていたんだ。
初めて触れた彼女の手…
握られているのにも関わらず、柔らかくて…
そして、冷たかった。