風花


東京にいた頃…。困っている人を見て見ぬふりをする人間を、俺は散々見続けてきた。俺自身もそんな人達の一人で。大変なんだろうな、そう思いながらも声を掛けることはなかった。

だから、余計に驚いたんだ。いくらクラスメートとはいえ、出会ってまだ三日しか経っていない俺のことを、自分の立場を危うくまでして庇ってくれる、彼女の行動に。


「みんなが東京のことを聞きたい気持ちはわかるよ。でも、だからって好き勝手に自分の意見を主張しちゃ駄目だよ。きちんと順番に質問して、もし、質問の答えが自分の納得いくものじゃなかったとしても、それはそれで納得しなきゃ。ね?」
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