風花
不思議だった。子供が親を平気で殺せるような、このご時世。誰もが自分自身のことしか考えず、自分を第一にするこのご時世。
そんな腐ったご時世において、ここまで人のことを考えられる彼女のことが、本当に不思議で仕方なかった。
「それじゃあ、ご飯タイム再開ってことで。紡君。唐揚げ貰うね」
「え…?あ、おい!?」
先程同様、そのことに頭を占拠されていた俺は、舞歌が俺の、最後の一つの唐揚げに手を伸ばした時、反応が遅れてしまった。
慌てて阻止しようとするも、時既に遅く、唐揚げは彼女の箸にさらわれて…
文句を言おうと俺が口を開くより早く…。唐揚げをさらう為に身を乗り出していた彼女が、その唐揚げを口に運ぶことなく、俺の耳元に口を寄せ小さく囁いた。