風花
「草部紡です。よろしくお願いします」
古びた、やはり木造の教壇に立ち、僅か十数名しかいないクラスメイト達に当たり障りのない挨拶をし、頭を下げる。
顔を上げると、全員が俺のことを興味津々といった視線で見ていて…
わかっていた事とはいえ、嫌で仕方なかった。
「草部君は、お父様の仕事の都合で、先週、東京からこの村に引っ越して来たばかりだそうです。まだこの村には慣れていないと思うので、皆さん色々教えてあげて下さいね」
ざわざわと、担任の女教師の言葉に、予想通り、教室内が騒がしくなる。
そんな彼等の反応に、俺は作った笑顔を貼付けたまま、内心でため息をついていた。
「はいはい!騒ぐのはあとにして!今日は他にも連絡事項があるんだから!」
女教師の注意に一瞬静寂が蘇るが、やはり人間の好奇心は抑えられないらしい。先程よりもボリュームは落ちたものの、そこら中から囁き合う声が聞こえる。
「はぁ…。まったく…」
呆れたようにため息をつく女教師。けどそんな彼女の顔には諦めの表情が浮かんでいて。
仕方ないこと。そう彼女も思っているのだろう。