強盗団は月夜に踊る
第一章

京子

「この度は弊社の新卒採用選考にご応募いただき、
ありがとうございました。

厳正な選考を重ねた結果、誠に残念ながら今回は採用を
見送らせて頂くこととなりました。
貴殿のご期待にお応えすることが出来ず、大変申し訳ござい
ませんが、悪しからずご了承下さるようお願い申し上げます。

末筆ながら藍澤 京子様の
今後の益々のご健勝とご活躍を心よりお祈り申し上げます。」

「はぁ~。」

ピンクに統一された、物は多いが整然とされた6月の湿っぽい部屋で、選考を落とされた時に届く通称「お祈りメール」を読みながら、京子はため息をついた。

団塊の世代の退職で、新卒採用数が大幅に上昇しているこのご時世に、上昇気流に乗れずに落ち続けている。

京子は「私達はラッキーよね、就職活動が楽な世代ですもの。」と正月明け頃に友達と話し、わけのわからない優越感に浸っていた自分を思い出し、またため息をつく。

「はぁ~。」

その時、机に置いてある携帯が鳴り出した。着信音は、子供の頃から好きで聴いているBeatlesの「Help!」という曲だ。

携帯を開くと「奈々」という名前が出ていた。京子の親友で、正月に共に優越感に浸っていた一人である。
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