強盗団は月夜に踊る
右奥の隅に座っている川瀬は何か言いたそうな顔をしていた。それを見て気になったのか、対面にいる杏奈が口を開く。
「川瀬君、どうしたの?」
「え?あ?な、何でもないよ」
「え~、ホントに?今なんか凄く言いたい事ありそうな顔してたよ」
「ほ、ホント何でもないって」
「ふ~ん、それならいいけど。言いたい事はちゃんと言わないと体に毒だよ」
「う、うん。杏奈さんありがと。でもホント何でも無いから」
川瀬は動揺していた。それはその場にいた誰もが自然と感じ取れるものだった。ただ、この川瀬という男は、人見知りのせいで、いまいち溶け込めてないというか、何となくどんな人なのかがわからない…見た目は普通の地味な大学生って感じなのよね…杏奈は川瀬を見てそう思っていた。
「ね~、笹川さん、早くミーティング始めようよ。ナオさ、興味ない会話続くと眠くなるから」
「おぉ、悪い悪い。じゃ、はじめるぞ、まずは今夜のコンビニ強盗の打ち合わせからだ」
杏奈はナオを見つめる。杏奈は不思議に思った、自分のことをナオと呼ぶこの女子高生、短いスカートの制服でホントに普通のいまどきの女子高生が何故強盗団の中にいるのだろうと。確かにこの中で一番しっかりしていたりもするのだが、未成年だし、正直どんな理由から笹川がこの子を仲間にしたのか全くわからない。
まぁ、他の人達もあんまり仲間にした理由はわからないのだけど。笹川に聞いても「必要だからだよ」としか言わない。でも、女子高生だよ?まさか…笹川にそんな趣味が!?
「杏奈!おい、ちゃんと聞いているのか?」
笹川が杏奈を見て言った。
「あ、ごめん!違う事考えてた!もう一回お願い!!」
「まだ何も言ってねぇよ」
「・・・・・・・・。ごめん。」
京子と遼一が笑ってるのを見て、杏奈は少し顔を赤くした。