強盗団は月夜に踊る
「今日やるのは、五丁目のコンビニだ。深夜は店員一人のシフトになっている。順序はいつも通り。深夜2時に川瀬の準備した車に、全員で乗り込む。そして、コンビニに着いたら、客がいないか確認して、俺がモデルガンで店員を脅す。そして、金を奪っておさらばだ。海までドライブでもしようじゃないか」
「シンプルな計画だね。相変わらず」京子が言う。
「あんまり細かく考えるのは好きじゃないからな。最低限の下見はしているけど、後は考えても無駄だ。世の中はファジーで成り立っているんだから。あ、今回の運転も京子に任せて良いか?」
「いいわよ」そう言って、長い黒髪をいじりだした。
「まぁ、もうコンビニ強盗も五回目だ。だからといって、慣れたものだから大丈夫という気の緩みはだめだ。しっかり練習するぞ」
「つっても、俺ら車に乗っているだけなんでしょ?」
遼一がそう言うと、笹川は遼一を見て言った。「俺に万が一のことがあったら救うのはお前達だ。お前達がいるから俺は安心して仕事が出来る」
「そんなものかねぇ…。」
「そんなものだ。」
そう笹川が言うと、店の奥で物音がし、カフェのマスターが、6杯の珈琲をトレーに乗せて近づいてきた。
「珈琲が入ったぞ」
「ありがとう、マスター」ナオがそう言って、ひとつひとつ取り、配りだした。