強盗団は月夜に踊る

遼一

遼一は、あくびをしながらサッカーゲームをひたすらやり続ける。

サッカー好きでフリーター、20代前半で金髪。典型的な今風の男である。特別カッコいい訳ではないが、モテなくも無い。

ただ、彼の人生を振り返ると、運がよいとは決して言えないものだった。小学校時代は転校が多く友達は少なく、中学高校は不良仲間と遊んでいても、いっつも補導に引っかかるのは遼一だった。デザインが得意だった遼一は夢を持ち専門学校へ進むも、親が借金を作って夜逃げしたためあえなく中退…。

そして行き着いたのが昼夜逆転ゲーマーフリーターである。

「よっしゃ!」

遼一の使っているチームが得点を決めた。画面を見つめながら小さく声を出す。こんな毎日の繰り返し。あの日までは。


その日、遼一は深夜バイトのコンビニへ自転車で向かっていた。

深夜のコンビニはレジや品出し、惣菜作りなど意外と仕事は多い。それでも楽な方には間違いなく、夜型人間の遼一にはぴったりの仕事で「これは俺の天職だわ。この歳で天職に出会えるなんて運がいいぜ」とよく周りの人たちに自慢げに話していた。

「遼一君」

「うわっ!」

遼一は突然目の前に現れた男にまず驚き、名前を呼ばれた事に驚き、そしてその謎の男が自分の働いているコンビニの常連の客だった事に驚いた。
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