強盗団は月夜に踊る
「金とチームワークは好きか?」
「…は?」
謎の男は繰り返す
「お金とチームワークは好きか?」
遼一は少し考えて答えた。
「ん~…。お金は好きというか、必要だし、貰えるなら貰うし、稼げるなら出来るだけ稼ぎたいな。親の借金もまだあるし…。」
謎の男は軽くうなずいているように見えた。遼一はそれを確認しながら続けた。
「チームワームは好きだね、俺が好きなサッカーでは大切なものだ。サッカーにおける最高のプレーってのは完璧な個人プレーかチームワークによって生み出されると俺は信じているしね」
「決まりだな。俺と手を組めば金と最高のチームワークを手に入れることが出来るぞ」
「は?」
「う~ん、まぁ説明しづらいから今度ミーティングに是非来てくれ。メールで日時と場所は送るから。興味あればメールアドレスだけ俺に教えてもらえないか」
遼一は怪しんだ。当然といえば当然である。しかし、目の前にいるこの男には妙に説得力があり、妙に自分に期待と信頼を向けてきている感じが嫌というほど伝わってきた。
遼一は最近の変化の無い生活を思い出した。抜け出したかった。それは正直な気持ち。ただ機会が無かっただけ。この機会を逃せば死ぬまで何も変わらないかもしれない。遅刻決定のバイトがクビになる可能性だって無くは無い。アドレスくらい教えても…損は無い。
遼一は渡された紙とペンにアドレスを書く。赤外線で交換しないのは久しぶりだ、この男携帯を持たないのか?などと思いつつ。
「…これが俺のアドレスだ。じゃ、もう行くよ、俺は。バイトだし」