強盗団は月夜に踊る
杏奈の頭の中で色んな事がめぐる。しかし、自分の良い様にしか結論を持って行けないのであまり意味が無かった。

「笹川…あいつが今まで言った事で間違っていた事は……一度…一度しかないわ。大丈夫よ、わたしったら何を心配しているのかしら」

杏奈と笹川は大学時代に出会った。笹川はテストの点はイマイチだが、頭がよく、夢とか語るのが好きで、大人っぽかったり子供くさかったり、とにかく変な奴だった。杏奈はそんな笹川に絶大な信頼を置いていた。杏奈自身、自分がテストで点は取れるけどバカな事くらいわかっていた。

笹川はいつも確実に正しい事をいっていた。

いつもいろんな事を笹川から笑いながら指摘されてきた杏奈にはその事を一番理解していた。

杏奈には自信があった。杏奈は窓の外の異質なビルを視界から外し自分を落ち着かせた。

その時、杏奈の携帯が鳴り出す。電話だ。笹川からだ。着信音でわかる。ルパン三世のテーマは笹川だ。

「もしもし?」
「杏奈か?今、大丈夫か?」

笹川の声は落ち着いた低い声で、それでいて人をひきつける何かを持っていた。少なくとも杏奈にはそう思えた。

「どうしたの?仕事?」
「あぁ。仕事だ。一ヶ月ぶりくらいだな」

「またコンビニ?」
「あぁ。そうだ」
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