涙で育った赤い花
……でも、
逃げちゃダメ。
逃げちゃいけないんだ。


―バスの中―
「ねぇ、いい加減教えてよ〜。」


「うん…。」


そう言ったきり私は黙り込んでしまった。


……言わなきゃ。
でもここ、人口密度かなり高いし…。
下手したらみんなに丸聞こえ……。


「……もういいよ。どうせ教えてくれないんじゃん。」


そう言って隆斗は、顔にタオルをかぶせて聞く耳を持たなくしてしまった。
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