個人的事情につき“50センチ以内”禁止

何を話しているのかはここからじゃわからないが。

彼女と中村が時おり笑いながら話しているのはわかる。





…あの野郎、懲りもせず近づくとはいい度胸じゃねぇか。

また仕事増やされてぇのか。





あの時のイライラが甦り。

手にしていたボールペンからミシミシという不快音が微かに聞こえてきた。

その時、俺は気付く。





中村とは普通に話をしている。

よく見てみると。

普段と何ら変わりはない。

…不機嫌そうに見えたのは、気のせい、か?





「…課長、お願いします」

「あぁ、わかっ…!?」





…いや、違った。

普通じゃない。

さっきのミスを直してきた彼女の顔。

それは泣きそうな、悔しそうな。

それでいて不機嫌で。

…その不機嫌丸出しは。

どうやら“俺限定”らしい。




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