個人的事情につき“50センチ以内”禁止

「俺が、なんだ…?」





右手は頬に添えたまま。

そして“全部話せよ?隠すなよ?”という意思表示も込めて左手で彼女の手を握った。

彼女はビクッと体を揺らした後。

ポツリポツリと話し出した。





「…私、見ちゃったんです」

「何を?」

「課長が…女の子の髪を触っているところ…」

「は…?」





目が点、鳩に豆鉄砲、青天の霹靂。

俺には彼女が何を言っているのか理解できなかった。





彼女以外に触れるなんてあり得ない。

まして髪になんて触れていない。

俺がいつ、そんなことをしたって言うんだ?





「見間違いじゃ…」

「見間違いかなって思ったんですけど…。
その後、その子が“遠藤課長っていいにおいするよねー”って他の子に話してるの聞いて…。
なんでそんなに近付く必要があったのかなって、モヤモヤして…ました…」





そう言うと。

彼女は頬を赤らめ、俯いた。




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