指先に願いを



「でも酒井さん、来月結婚するんでしょ?」



その代わりに出てきた言葉に、一瞬時間は止まる。





『来月結婚する』





「あー、総務課の彼女だっけ?付き合い長いもんねぇ」

「結局いい男はよその女のものってことだよねー」

「……」





付き合いの長い、彼女

その彼女との、結婚





「…すみません、図書館の者ですが」

「え?あっはーい」



話が一区切りついたところで声をかけるとようやく気付いた彼女たちに、私は書類を手渡し足早に建物を後にした。



「…、」



結婚、するんだ。…そっか、ようやく。

もう結構前から『何年も付き合ってる』って話、あったもんね。



そっか

そっ、か




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