指先に願いを
だから、気安く触ってなんてほしくなかった。
分かってた、知ってた。私が好きになった時にはすでに彼は彼女のものだったこと。
彼自身はそれをわざわざ言葉にしてくることはなかったけれど、そんなもの女性同士の噂話ですぐに回ってくる。
それでも、気付いてしまった時にはもう手遅れ。気持ちは止まらない、どうにもならない。
ただ現実から目をそらすようにして、その幸せに浸っていた。どんなに目をそらしても、現実は変わらないのに。
頭を撫でるその優しい手は、彼女のものだということ。