指先に願いを



『トモ:結婚するんだって』



その夜、いつもと同じようにパソコン上で繰り広げる会話。そこでやはり淡々とその文字を打つと、すぐに反応が返ってくる。



『ビビ:えぇ!?結婚!?』

『トモ:うん、だからもうおしまい』



これまでいろいろな話を聞いてくれた彼女にだから、恋の終わりの報告くらいしなければ。そんな気持ちから伝えた私に、彼女は少し間を置いて言葉を返した。



『ビビ:…いいの?』



いいの、?



『ビビ:おしまいにしようと思っても、きっと終わらないよ。伝えてない気持ちは、一生終わらない』

「……」



気持ちは終わらない。

きっとこの先も、何度も何度も思い出してその度胸を締め付ける。苦しくて泣きたくなって、言えばよかったと後悔するのだろう。



『ビビ:ゲームみたいに、簡単にリセットなんて出来ないよ』



…でもいいんだ。終わらないなら終わらせる、無理矢理にでも断ち切る。

終わらない気持ちを、抱えて生きていく。



『トモ:…うん、』





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