指先に願いを



「…その話、どこで聞いた?」

「昨日、市役所に行った時に。元々こっちでも噂でしたよ、ずっと付き合ってる彼女がいるって」

「噂、ね…」

「変に誤解されても困りますし、そもそも返却もきちんと受付で済ませてください」



だからこうして終わりにする。これ以上期待しないように、この時間を楽しみにする自分がいないように。



「まぁまぁ、そんな深く考えるなよ。ただのスキンシップだろ?」

「……」



スキンシップ、?

何を言っているの?

彼は笑う。何も知らずに気付かずに、へらへらと笑って。その鈍さに、さすがに腹が立つ。



「…酒井さんにとっては、ただのスキンシップかもしれない。けど、私にとっては違う」

「違う…?」

「触られる度に、好きになる。諦めなきゃいけないって思うのに、出来なくなる。あなたを見ていると苦しくて…嫌になるくらい、好きになるんです!!」



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