指先に願いを
あぁもう、伝えないで終わりにしようと思ったのに。言いたくなんてなかったのに。
抑えきれない感情を、ぶつけてしまう
「だから、もう触らないでくださいっ…」
そう言い切ったその時、突然後ろから抱き締める腕。
「…ならよかった。毎日触り続けた甲斐があった」
「…え…?」
布越しの力強い腕。それはぎゅっとしっかりと、この体を包み込む。
「酒井、さん…?」
「知ってる?俺がいつもどんな気持ちでここに来て、どんな気持ちで有村の頭を撫でていたか」
今こうして体を抱き締める彼が、どんな気持ちで触れていたか?
「有村が俺のこと好きになってくれますように、ってずっと願っていたんだよ」
耳元で響く、彼の願い
それはつい先程まで悲しい気持ちばかりだったこの心を、驚きと喜びに変えていく。