指先に願いを



「なん、ですか…それ。だって、酒井さん、結婚するんじゃ…」

「ん?俺?しないけど」

「えっ!?」



あっさりとそう言ってみせる彼に私は声をあげ顔をそちらへと向ける。すると酒井さんはおかしそうに笑って私の額にコツンと額を合わせた。



「結婚するのは、俺の隣の課の『酒井さん』」

「へ?それじゃあつまり…」

「同じ名前の別人の話ってこと。ちなみに俺のことは皆『酒井くん』呼びだから」

「……」



つまり、全部私の勘違い…!?

聞こえてきた噂話、という程度でしか話を聞いていなかった故に起きたのであろう勘違い。驚きと安心感で思わず変な顔になってしまう。


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