指先に願いを
優しい瞳でそう囁く彼から伝わるのは、愛おしい気持ち。
その心に今度は自ら触れるように抱き締める袖をきゅっと握ると、それを合図に酒井さんはそっとキスをした。
お昼の暖かな日差しに包まれた部屋で、重ねる唇。それはとても優しく愛を伝える。
「…じゃあ、これから酒井さんはどんな気持ちで触れてくれるんですか?」
「ん?そうだな、有村が俺を好きになってくれるようにって願いは叶ったしなぁ」
離れた唇でそう問いかけると、彼は顔を近付けたままうーんと悩む。それをじっと見る私に、微笑んで今度は正面から体を抱き締めた。
「じゃあこれからの願いは、有村がずっと俺のことだけ見ていてくれますように」
そしてその言葉とともに、優しく頭を撫でた。愛おしむように包むように、触れる指先。
その願いなら、きっと叶うよ
だって私はもうすでに、あなたのことしか見えていないのだから。
そう心の中で呟いて、その腕の中に顔をうずめた。
頭を撫でる彼の手、それは私だけのもの。
end.