指先に願いを



地方にある、とある市立図書館。そこで職員として働くのが私・有村智、24歳。

客観的に見て、目立つような人間ではなく愛想もない。趣味のネットゲームを夜中までやり込みつい夜更かししがちなこと以外は、いたって普通の図書館職員だ。



その図書館の隣には大きな市役所があり、そこで働くのが彼・酒井さん…こと、酒井瑛士。

私より三つ年上の彼の趣味は読書で、昼間の休憩時間にこうして本を借りたり返しに来たりするのが日課。主に歴史物が好きで、どんな分厚い本も一日二日で読み切ってしまうのだから余程好きなのだと思う。



彼との始まりは、一年ほど前。

元々常連、ということもあり人当たりもいい彼は誰とでも仲良く、それ故にこちらの職員とも仲が良くこの休憩室にも堂々と入って来ていた。

そんな彼の存在を知ってはいたけれど、私には特に縁のない相手だと思っていたから特別会話もしたことなかった。



そんなある日、いつものように夜更かしをしてしまって、こうして昼休みを寝て過ごしていたところに彼が現れた。



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