指先に願いを



「……」



仕事を終え、一人暮らしの家のことを一通り終え…とするうちに、九時過ぎを迎えた夜。私はいつものように愛用のパソコンの前に座ると画面を立ち上げカチカチといじる。

画面に表示された『ファンタジータウン』というのが私がここ数年続けているゲームで、オンライン通信で全国の人と繋がれるといったもの。

仲間と冒険をして、レベルを上げて…と内容は普通のゲームではあるけれど、その中で仲間とチャットが出来るというところが好きで私は続けている。



『トモ:こんばんは』

『ビビ:トモさん!こんばんは〜』



挨拶をするとすぐ返ってくる反応。彼女、“ビビさん”はこのゲームを始めた頃からの付き合いで私の友人。ゲームを一緒に進めることももちろんあるけれど、普段はこうしてチャットで会話をすることが多い。

顔が見えないから、実際どんな人なのかなんてことは分からない。けれどだからこそあれこれ話せることもあり…現実世界の友人たちよりよっぽど多くを話せているかもしれない。

こういう所は確かに彼の言う通り『現代っ子』なんだろう。


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