指先に願いを
「や、やめてください!近い!」
「いや、本当いい匂いだなーって思って…あれ?照れてる?」
「照れてなんてないですから!」
その言葉とは裏腹に慌ててその顔を押し退けると、酒井さんはおかしそうに笑った。
「何だ有村、意外と可愛いところあるなぁ」
そしてまたからかうように言ってポンポンと頭を撫でて部屋を後にする。
「っ〜…」
ドキドキと心が鳴る。その手に、その距離に。
あぁもう嫌だ、心臓がうるさくて全身を熱くする。またこんな風にドキドキさせる彼の存在、またその姿が心の中を占めていく。
残された本を抱き締めて、その姿の愛しさを感じた。